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次の国際目録原則(International Cataloguing Principles)の最終的な草案が公開された

2008-05-26

『カレントアウェアネス-R』が、『Catalogablog』経由で報じている。『カレントアウェアネス-E』でも5月14日に「IFLA目録分科会,新しい国際目録原則覚書の草案を発表( E783)」が出た。
「Statement of International Cataloguing Principles」のサイトでは、この草案についての意見を集めている。期限は2008年6月30日である。

このサイトには、次の言語の草案が用意されている。

English
الْعَرَبيّة (Arabic)
汉语 / 漢語 (Chinese)
Deutsch
Español
Français
Italiano
日本語 (Japanese)
한국어 (Korean)
Português
Română
日本語は、おそらく国立国会図書館の書誌調整課が翻訳するのかな。そうでなければ、誰でもよいから、急いで翻訳してほしい。誰もしないならするけど(筋違いで、間違いもあると思いますが)……。と思っているうちに出ました。
現役のカタロガーはもちろん、「カタロガーだった」と自認する方も、是非ご確認いただきたい。
『FRBR』の日本語版が無料公開されたのは、やっぱり、これがらみですよね。FRBRを理解していないと意見が言えませんから。
  →「FRBRの日本語訳がウェブで公開(カレントアウェアネス-R)」

これは1961年の「パリ原則」を基礎とする「現在の」国際的な目録の書き方・書誌コントロールのしくみを改訂する、最初の一歩である。
最初の一歩とはいえ、ここに至るまでに、「IME ICC(IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code=国際目録原則に関するIFLA専門家会議)」において、6年にわたって検討されてきた。この間、次の場所で会議が開催され、それぞれの地域の意見が反映されてきたそうだ。

2003 フランクフルト(ドイツ) 対象地域:ヨーロッパおよび英米(北米)
2004  ブエノスアイレス(アルゼンチン) 対象地域:ラテンアメリカ(中南米)、カリブ海諸国
2005  カイロ(エジプト) 対象地域:アラビア語圏である中東および北アフリカ諸国
2006  ソウル(大韓民国) 対象地域:アジア諸国
2007  プレトリア(南アフリカ) 対象地域:サハラ以南のアフリカ諸国
この辺は、IFLAの『Cataloguing Section』が詳しい。
また、ソウルでの会議だけは、国会図書館日本図書館協会が報告している。この会議のサイトはこちら
て言うか、目録専門家(カタロガー)が連続して検討している会議なんだから、本当は、毎回の報告が欲しいところである。実際行ってないなら仕方ない。

最初の一歩であるが、この後に続く目録の大変革を考えると、この局面についての「投了」の一手(将棋の詰み)かもしれない。
この草案への意見は6月末に締め切られるが、7月には『AACR2(英米目録規則)』の次期版である『RDA: Resource Description and Access』の草案全文が公開される予定になっている。
スケジュールが連動していることがわかる。
『RDA』も意見が集められた後、2009年の早い時期にリリースされるという。

ここ『目と耳』で繰り返し書いてきた海外の動きの多くは、この書誌コントロールの新しいしくみへの流れにつながっている。

「Google 2題(2004-10-15)」では、OCLCの「Open WorldCat program」がパイロット事業から、正規の事業になることを紹介しました。インターネットが普及した状況の中で、図書館(の目録)が生き残るための、OCLCの戦略が軌道にのった。「Worldcat は「真の世界書誌」をめざす(2005-5-12)」でも継続して取り上げました。
「LCSHとメタデータ(2004-10-22)」は、1991年の第5版以来となる『国立国会図書館件名標目表(NDLSH)2004年度版』の改訂についてでした。これは年1回更新し、新設件名を毎月、追録する現在の『NDLSH』の最初の動きでした。「誰もが使える件名が求められる時は来る」と見通してのことだと思います(多分)。
2006年の前半4つの記事は、関連する記事ばかりでした。
「ドイツ図書館もMARC21へ(2006-2-17)」で書きましたが、MARC21へあらかじめ目録を移行しておくことが、RDAへの移行の近道だと、ドイツは判断したのです。件名の連携(LCSHとの)も書いたとおりです。
「RLGがOCLCと合併(2006-5-8)」は、「国策捜査」ならぬ「国策合併」の印象がありますが、どうなのでしょうか。
「LCのキャルホーン・レポートとシリーズ典拠の中止(2006-7-14)」ではLCSHの廃止勧告を巡る動向を書きました。
その後の「On the Record:Report of The Library of Congress Working Group on the Future of Bibliographic Control」「Library of Congress Subject Headings Pre- vs. Post-Coordination and Related Issues」については紹介できませんでしたが、次の文章にまとめられています。
■「LC,LCSHの事前結合/事後結合方式等に関するレポート公表(E768)」  『カレントアウェアネス-E No.125 2008.3.26』
■倉光典子(書誌部)「書誌コントロールの将来に向けたLCの取り組み(CA1650)」  『カレントアウェアネス No.295 2008年3月20日』この文章の終わりの方にこんな記述もあります。
WGの報告は、LCにのみ向けられたものではない。LCと同様の使命を負う他国の国立図書館も含めて、広く関係者に向けられたものである。
今後、LCと他の関係機関は、勧告に対して、それぞれの立場で優先順位を設定し、実行に移すことになろう。国立国会図書館も、国立図書館としてLCと共通する部分については、引き続きその動向に注視する必要がある。

『RDA』がリリースされれば、準備を進めてきた欧米の目録の変革は、比較的スムーズに進むのではないか。
なかでも英語圏では予想以上の早さで事態は進むだろう。英国図書館(British Library = BL)、米国議会図書館(LC)、カナダ国立図書館・文書館(Library and Archives Canada = LAC)の3館の主導で、「RDA/MARC Working Group」が結成され、MARC21からRDAへの変更に関する草案を2008年7月に開催予定の「MARC community」に提案するという。これもスケジュールが連動しているよ。

多くの研究論文や一般への広報、たとえば「RDA」サイトの先頭にあるこれ(PDF 748KB「Feliciter」Vol. 53 No. 5, 2007)、もちろんRDAへの移行に際してのマッピングについても、検討が重ねられている。海外では目録の教科書も、早い時期に、全面的な改訂がされるでしょうね。

さて、それに対して日本はどうか?

残念ながら「日本語の目録が、この流れにのっていない」「図書館の業界に関係した、IME ICCなどの国際機関や国際基準の策定機関で、リーダーシップを発揮する実力がない」のは事実であるらしい。私はそれが何故なのかを研究者に教えてもらいたい、と希望する者であるが、それは後でもいい。
目の前の課題は、ざっくり言って、「インターネットが普及した現状における図書館の目録の品質」である。
たとえば「件名や分類が必須でない」NACSIS-CATの品質は、使えるレベルなのだろうか?  使えないなら、どうすればよいのか? 
つまりシステムの中身(コンテンツ)である目録、その品質が問われている。

だから「Next-L」とか「Shizuku」とか、容れ物(受け皿)のことは別の課題なのです。もちろん『日本目録規則(NCR)』の改訂へのタイムスケジュールとか、FRBR的な表示ができるOPACとか、NIIとOCLCの両方を効率的に利用できる図書館システムとか、そんな話があるなら教えて欲しいけど。

目録の品質には書誌コントロールの有効さも大いに関係する。FRBRですから。
国際的な書誌コントロールから、日本語の目録が置き去りにされないように、

日本語の「名前(固有名)」と「主題」についての、日本国の典拠を一つにまとめて、無料で使えるツールにする

つまり、まず『Library of Congress Authorities』と同等にするところからではないか。『LC Authorities』は、2002年7月にパイロットプロジェクトがスタートしているから、今すぐはじめても6年遅れ。
だいたい国会図書館以外にも、TRCとNIIに大きな典拠ファイルがある。でも「国がかかっている」とすればねぇ、と思っていたのである。
そんなとき、5月19日の『カレントアウェアネス-R』が、国立国会図書館の「書誌データの作成・提供の方針(2008)PDF 56KB」公開を報じた。そこに、こんなことが書いてあった。

▼典拠ファイル、件名標目ファイルの共通化
NDLの典拠ファイルと外部典拠ファイルとの突合を行い、ファイルの共通化の方策を検討する。
NDLSHと基本件名標目表(BSH)との共通化について協議を継続し、方向性を明らかにする。

それからこんなことも。

▼典拠データの公開とダウンロードの実現
▼書誌データ提供のために利便性の高いAPIの提供

今年度から5年程度の方向性ということだ。でもぐずぐずしていると「6+5」で10年以上、国際標準(日本以外のアジアを含む先進諸外国ではあたりまえにできること)から遅れてしまう。本気で取り組めば1年以内にできると思うけどね。
万一うまく進まないと「国レベルの情報格差」を思い知ることになりはしないか。子どもの学力など教育から、特許に関わる科学技術、そしてインテリジェンスも。
図書館で仕事をする私としては、日本に関する情報(メタデータ)を外国から買うような事態は是非とも避けたい。

2008年2月のOCLCメンバー評議会(OCLC Members Council)において、Tony Ferguson氏が発表した「Open a Cataloguing Factory in Asia」(PDF 544KB)のなかに、こんなアイデアがある。

中国に目録作成工場(cataloguing factories)を設置して安く目録を作成する。中国語が主力だが、日本語、朝鮮語、英語も可能性がある。

正式にやるとなったら本当に怖ろしい。Googleと同じアメリカの組織ですから。

■国会図書館
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以上、書きかけ(2008/5/2 pm8:08 --> 2008/5/7 am12:05 --> 2008/5/26 pm6:30)

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