NHK『NEWS WEB
24』は、最近のテレビニュースのうち、よく見る方の番組だ。ツイッターを使っているところに特徴がある。
2012年11月1日(水)の『NEWS WEB
24』は、メインの「深く知りたい」で、ディズニーによるルーカス・フィルム買収を取りあげていた。その後の「気になるニュース」のコーナーに、図書館の話題があった。
「図書館で借りた本/過去最大に」という見出しで、国民1人当たりへの貸出冊数が過去最高だったという話題だ。
これは文部科学省が前日10月31日に発表した「平成23年度社会教育調査中間報告」による。文科省の担当は生涯学習政策局調査企画課で、調査のポイント7点の中に「6
図書館の国民・児童1人当たりへの貸出冊数・貸出回数」がある。
カレントアウェアネスでは、こうまとめた。「文部科学省、2011年度社会教育調査の中間報告を公表」
7つのうち、図書館に焦点が当たった報道ばかりだったのは、どうしてかな。
番組の中では、こんなやりとりがあった。角括弧は[補足]です。
社会学者・古市憲寿さん●ツイッターでもあったように本当に、良い傾向だなあ~[@mirixmari]と思う訳ですね。
アナウンサー・橋本奈穂子さん●わたしも本当にそう思います。
古市●ただ本を書く方としては、ちょっと困るって面もありまして、僕の本[『絶望の国の幸福な若者たち』]は、たまたま杉並区立図書館で検索してみたら、89件待ち、って書いてあったんですよ。
橋本●ツイートでありましたね。予約して半年くらいかかる。待つもんね[@ririkonnta]ーって。
古市●すごい有り難いんですけど、逆に言えばその89冊、本当は買っていただけるはずだったものが、買ってもらえないってことで。
橋本●うーーん。
古市●とくに僕はまあいいとしても、小説家の方とか本を書くことを商売にしている方にとっては、図書館が[貸し出す?=聞き取れず]ってのは、実は困っちゃう面もあるんじゃないかな。
橋本●でも利用する側からしたら、いろんな本がある中で、[図書館では]読みたい本を手に取って読むことができる。たくさん読みたくても、どうしても本にかけられるお金って[ひと]月の中で限られてる訳ですから、その中で読む選択肢が増える、そして今ありました遅い時間まで開いている[図書館]、それは本当にいいことだし。
古市●まあー、はい。
橋本●昔の図書館って、調べものをする、難しい辞書を見に行ったり事典を見に行ったり[それ]以外のこういう楽しみ方ができるというのは、いいと思うんですけどね。
古市●僕の本はじゃあ、お金を出して買う価値がないということですね?
橋本●そういうことは言ってないですよ。
古市●でも図書館とか本屋とか出版社とか、サービスの競争が高まっていって、利用者がもっと何か便利に利用できるようになれば良いなっていう風には思いますね。
橋本●今後タブレットでの読書が広まったら、また傾向も変わってくるかもしれない。
古市●本当にそう。家で[図書館の]本が借りられてしまって、別に、本当に本屋さんに行くよりも[図書館の方が]便利、みたいなことが増えてくると、著者としてはちょっとツライかなあ、とかは思いますね。
無料で本を貸し出す図書館は、著者としてちょっと困るって。ついログを読むと、古市さんのフォローが読めるけど、「専業作家にとって図書館が脅威なのも事実」なんですね。
一方、図書館では腕のある「専業図書館員」は相当少なくなっていると思う。図書館が広く根付いていないように見えるこの国から、図書館の技術が消滅するのではないかと、危惧する人もおられます。人手のかかる地味な仕事ですからね。まあそれは作家さんには関係ないことですが。
togetterに「図書館の一人当たり貸し出し過去最高報道の反応」「NHKラジオ第1『私も一言!夕方ニュース』「貸し出し数過去最高
これからの図書館は?」」の2つのまとめがありました。
(書き忘れがあるかも。)
Categories: 公立図書館, 貸出, 読書
みなさまのおかげにより、当館作成の『パスファインダー・LCSH・メタデータの理解と実践:図書館員のための主題検索ツール作成ガイド』は、2刷ができあがりました。ありがとうございます。紀伊國屋書店出版部より出荷されています。
さて、このところ立て続けに図書館業界以外の雑誌で、図書館の特集や記事を見つけた。『都市問題(東京市政調査会)』と『建築ジャーナル』の9月号だ。
『都市問題』はズバリ「模索する公共図書館」という特集である。
根本彰さんや松本功さんが「(公共)図書館ってこうでしょ」という話を書いている。「ハコではなく、提供するサービス(ハコの中身)が問われる」とか、「情報活動をアシストする図書館」とか、繰り返し語られるべき基本的な話である。
このほかは4つの図書館(仙台、桑名、高知、つくば)の事例だが、足元がしっかりしていないなかで、何とか立ち上がった現場の様子が読み取れる。現場のがんばりで想いを実現させても、長期展望は描けない。「楽観を許さない」状況はどこも同じか。それとも状況把握がズレているのか。
『建築ジャーナル』は「PFIで名建築はできますか」というフレーズに目が反応した。中を見たら、やはり桑名の事例などのほか、別の記事で田原市図書館館長のインタビューものっていた。特集メインの「大手設計事務所の本音」という鼎談では、「コストありき」からくる様々な問題が語られている。PFIから設計をはずすほうがいいという意見や、「要求水準書」を作成する段階で住民の意見が反映されていないとトラブルが起こるなど、興味深い。
雑誌とは別な話だが、今年7月に私立大学図書館協会の研究会で、「全国で初めて図書館運営にPFIを導入した」桑名市立中央図書館を見学した。壁に埋め込んだ自動化書庫に「へー」。数少ない職員の方が丁寧に案内してくれた。質疑応答の機会も設けていただけた。2つのことが印象深く、時折そのことを考える。
ひとつは「サービスの質」の評価は、やはり難しいということ。例として「目録の質」について尋ねたが、適切な答えを聞けなかった。
それから「平成の大合併」で隣接する多度町と長島町が2004年12月に桑名市となった(市域は約57平方キロから136平方キロへ拡大した)が、これが想定外だったということ。どうも「分館」の構想がなかったらしい。合併が決まってから「中央」という語を付け加えたそうだ。もとの多度町には「ふるさと多度文学館」という図書館がある。中央図書館のサイトには、なぜか、いまだに文学館へのリンクがない。
とにかく新図書館だけでいっぱいいっぱい、「初めて」だらけの大変さに思いを致す次第である。
でも新しくてきれいな図書館で、大幅利用増。
近所に住む本好きの知人もどっぷり通い詰めてるよ。いいなぁ。
■関連→熊谷弘志さんの「PFI手法から見た図書館への指定管理者制度導入」が載っている『図書館雑誌』の2005年4月号は「これからの公立図書館の行方:指定管理者制度導入をめぐって」という特集。
■関連→日本図書館協会「公立図書館の指定管理者制度について」(2005.8.4)
(PDF 32KB)
Categories: PFI, 公立図書館
半年くらい前、とある公立図書館に行ったときのことである。リサイクルの棚があったので「何かないかな」と見ていた。こういう棚で良いものにあたったことがないのでテキトーに、そして職業柄反射的に、左から右へ順になめるように、本を眺めていた。そうしたら意外な本が引っかかった。
『われらの図書館』である。
「あれっ『われらの図書館』が捨てられてる…」と思ったら、その隣に『図書館資源の共有理念とその検証(論集・図書館情報学研究の歩み 第16集)
』が並んでいる。
請求記号ラベルなどで装備されているから、住民からの寄贈とかではなく、その図書館の蔵書だったものだ。除架・除籍されてリサイクルの棚に置かれていたのである。
リサイクルの棚にあるということは、最近○○年における貸出回数が○○回以下、○○年以前の出版、0[ゼロ]分類の排架可能冊数は○○冊まで、などの理由があるのだろうか。その図書館のサイトには基準が書かれていないからわからない。
しかし「最近○○年における貸出回数が○○回以下」が理由だとしたら、そんなこと、買うときにわからないか?
『われらの…』は「もしかしたら」ということもあり得るが、『図書館資源の…』はその見かけからして、公立図書館で貸出が多いわけがない。
で、「この本、何のために買ったの?」と思った次第である。
「図書館についての本」って、ある種の戦略から買うんじゃないの?
いや、もちろん選書基準という戦略はちゃんとあるのでしょうけど。
この2冊は有難くいただいて帰りました。
Categories: 公立図書館, 選書, 蔵書構築
アマゾンなどネット書店・古書店の便利さはお分かりのことと思う。図書館利用経験のあるインターネットユーザー300人(20~60代)を対象に行った、興味深い調査についてはリンク先を読んでいただきたい。
「図書館は無料で利用するもの」という利用者のイメージは、なかなか消えないだろう。
というコメントを読んで、「図書館が理解されていない」ことがわかる実例が増えた、と思った次第。理解されていないのは、もちろん「世の中」のせいじゃない。
Categories: ネット書店, 公立図書館
8/4のアクセス(TBSラジオ)のテーマになっていました。番組への投稿はこちら。8/2の朝日新聞(東京・地方版)の記事「図書館で宿題、なぜダメ」がネタもと。
Categories: ヤングアダルト, 公立図書館
ちょっと前、2003年3月24日付朝刊「日本のスイッチ」にこの質問が載りました。「支払うべきだ28%、必要ない72%」でした。「作家・猪瀬直樹さんの質問」でしたから、猪瀬氏は「国が基金を作り、そこから著作権料を払う制度を提案したい」とコメントしていました。
■関連→こちらがiモードの入り口。(パソコンでは見られないか)
■関連→『日本のスイッチ』当館に入りました。【追記2005.7.15】
Categories: 公立図書館, 著作権