はやりのPFI
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さて、このところ立て続けに図書館業界以外の雑誌で、図書館の特集や記事を見つけた。『都市問題(東京市政調査会)』と『建築ジャーナル』の9月号だ。
『都市問題』はズバリ「模索する公共図書館」という特集である。
根本彰さんや松本功さんが「(公共)図書館ってこうでしょ」という話を書いている。「ハコではなく、提供するサービス(ハコの中身)が問われる」とか、「情報活動をアシストする図書館」とか、繰り返し語られるべき基本的な話である。
このほかは4つの図書館(仙台、桑名、高知、つくば)の事例だが、足元がしっかりしていないなかで、何とか立ち上がった現場の様子が読み取れる。現場のがんばりで想いを実現させても、長期展望は描けない。「楽観を許さない」状況はどこも同じか。それとも状況把握がズレているのか。
『建築ジャーナル』は「PFIで名建築はできますか」というフレーズに目が反応した。中を見たら、やはり桑名の事例などのほか、別の記事で田原市図書館館長のインタビューものっていた。特集メインの「大手設計事務所の本音」という鼎談では、「コストありき」からくる様々な問題が語られている。PFIから設計をはずすほうがいいという意見や、「要求水準書」を作成する段階で住民の意見が反映されていないとトラブルが起こるなど、興味深い。
雑誌とは別な話だが、今年7月に私立大学図書館協会の研究会で、「全国で初めて図書館運営にPFIを導入した」桑名市立中央図書館を見学した。壁に埋め込んだ自動化書庫に「へー」。数少ない職員の方が丁寧に案内してくれた。質疑応答の機会も設けていただけた。2つのことが印象深く、時折そのことを考える。
ひとつは「サービスの質」の評価は、やはり難しいということ。例として「目録の質」について尋ねたが、適切な答えを聞けなかった。
それから「平成の大合併」で隣接する多度町と長島町が2004年12月に桑名市となった(市域は約57平方キロから136平方キロへ拡大した)が、これが想定外だったということ。どうも「分館」の構想がなかったらしい。合併が決まってから「中央」という語を付け加えたそうだ。もとの多度町には「ふるさと多度文学館」という図書館がある。中央図書館のサイトには、なぜか、いまだに文学館へのリンクがない。
とにかく新図書館だけでいっぱいいっぱい、「初めて」だらけの大変さに思いを致す次第である。
でも新しくてきれいな図書館で、大幅利用増。
近所に住む本好きの知人もどっぷり通い詰めてるよ。いいなぁ。
■関連→熊谷弘志さんの「PFI手法から見た図書館への指定管理者制度導入」が載っている『図書館雑誌』の2005年4月号は「これからの公立図書館の行方:指定管理者制度導入をめぐって」という特集。
■関連→日本図書館協会「公立図書館の指定管理者制度について」(2005.8.4) (PDF 32KB)