聴覚障害 Hearing disorder.

このパスファインダーは、聴覚障害化について調べるときの、最初の「みちしるべ」として利用できます。

聴覚障害とは

聴覚障害は、「『聴覚という感覚の異常』であり、自覚的症状の一種として定義することができる。この症状のもっとも代表的なものが難聴である。慣習的に難聴(hearing loss)と聴覚障害は同義的に使用されている。」『視覚聴覚障害事典』岩崎学術出版社.1978.

一言で聴覚障害といっても、障害の要因、障害がおきている部位などにより、その症状は様々です。
また、聴覚に障害をきたすということは、コミュニケーション手段に障害をきたすということでもあります。そのため純粋に症状だけではなく、とりまく環境によってもその障害の程度は変化し、治療の方法、サポートの方法も様々になります。

このパスファインダーでは、成人の聴覚障害を中心に、とりわけ内耳の障害によって引き起こされる聴覚障害を中心に情報資源を紹介していきます。

ファセットの解説

聴覚障害の全体像をつかむには、主要な構成要素を把握することが近道です。
次の9つのファセット(側面)が、聴覚障害のガイド(標識)として機能します。

  1. 概説 聴覚障害についての概論
  2. 生理学 聴覚のメカニズム、聴覚にかかわる構造と機能
  3. 検査 聴力レベル・程度、障害の部位
  4. 診断 障害の種類・程度、治療の必要性
  5. 病因 障害に至った原因
  6. 治療 薬物療法、補聴機器の調整、補聴のための訓練(リハビリテーション・ハビリテーション)
  7. サポート コミュニケーション能力回復への援助、社会・家族など周囲の環境への理解支援、心理的サポート
関連キーワード
  • 聴覚障害
  • 聴力障害
  • 難聴
  • 内耳疾患
  • 内耳性
  • 迷路性難聴
  • 感音難聴
  • 聴覚障害者
  • 聴覚検査
  • 聴力測定
  • hearing disorders
  • deafness
  • hearing loss
  • labyrinth disease
  • sensorineural hearing loss
  • rehabilitation of hearing impaired
  • hearing test

パスファインダーには、図書館の資料、インターネット上で提供されている文献、データベース、出版情報やリンクなど、選りすぐりの資料や情報資源が掲載されています。

もちろん必要な部分だけを参考にするのもよいですし、これら以外にも情報資源(リソース)はたくさんありますから、図書館員にお尋ねください。

(Keiko Seko. 2012-4)

I. 下調べ(事前調査)

どんなテーマでも初めて調べる時は、まず「そのテーマ(内容)は何か」を知る必要があります。百科事典や主題別専門事典などを調べて、基本的な知識をおさえ、テーマの概略をつかみましょう。
それと並行して、「II. 情報集め(文献調査)」に使うキーワード(検索語の候補)のリストを作ります。できれば引用・参考文献もチェックします。

A. 専門事典・辞典

視覚聴覚障害事典.内山喜久雄監修.岩崎学術出版社.1978.11.

概説 生理学 検査 診断 治療

p446-447「聴覚障害」、p483-484「内耳性難聴」、p485-488「難聴」。
基礎領域、障害・症状と診断、その治療・指導・教育、関連法規、人名に至るまでを網羅しており、項目は五十音順で列挙されている
〈領域別項目一覧〉により調べたい領域から項目を探すこともでき、聴覚障害の学問的構成を容易に把握できる。

OPACレファレンス[和]/長 > 378/S85-1 || 4Fレファレンス/星 > 378/S852-3 CiNii

南山堂医学大辞典.第20版.南山堂.2015.4.

概説

p1818「難聴」、p1802「内耳性難聴」。
医学、薬学、医療関連領域から時代に即した見出し語を選出。具体的な症状、代表的な疾患名を列記するなど詳しく解説している。解説文中の用語のうち、見出し語として別項目で解説があるものは、それとわかるように表記してあるので、効率よく用語をたどっていける編集となっている。
索引は外国語索引。対応する和文用語があれば併記してあり、欧和事典としても利用できる。 BIB

OPACレファレンス[和]/長 > 4903/N48/カ || 星 > 所蔵なしCiNii

B. 入門資料

聴覚障害 1:基礎編.改訂版.山田弘幸編著.健帛社.2007.11.

概説 生理学 検査 診断 病因

聴覚障害の基礎について全体像を把握できることをねらいとしている。聴覚障害の概要、医学的基礎、各種の検査や評価、聴覚補償などについて解説している。各章末に引用文献・参考文献あり。BIB

OPAC書庫A/長 > 4969/G34/5ア || 星 > 所蔵なし CiNii

聴覚障害 2:臨床編.改訂版.山田弘幸編著.健帛社.2008.3.

診断 サポート

主に聴覚障害の評価・訓練・指導について小児、成人にわけて解説している。成人聴覚障害については第2章に掲載。その他、聴覚障害に関連した福祉制度についても解説している。
各章末に引用文献・参考文献あり。BIB

OPAC書庫A/長 > 4969/G34/6ア || 星 > 所蔵なし CiNii

よくわかる聴覚障害 : 難聴と耳鳴りのすべて.小川郁編.永井書店.2010.5.

生理学 検査 診断 病因 治療

疾患名で章立てがしてあり、疾患の原因、診断のポイント(検査のポイント)、治療のポイントが一目でわかるように構成されている。「QOL(=生活の質)」評価法や「カレントトピックス」で臨床試験や開発が進められている分野を解説している。内耳疾患による難聴は「X. 感音難聴」にて解説。
巻末に各種の診断基準などをまとめた「聴覚障害に関する基礎資料」がある。各章末に参考文献あり。BIB

OPAC書庫A/長 > 4966/O24 || 星 > 所蔵なし CiNii

聴こえの臨床.中井義明著.新興医学出版社.2003.9.

生理学 検査 診断 病因 治療

「第4章 難聴の原因およびその病態 III.内耳性難聴」p32-47、「第6章 治療 III.内耳疾患に対して」p103-115にて、内耳性難聴について解説している。巻末に「聴覚に関係する法令」、参考文献あり。BIB

OPAC書庫A/長 > 4966/N34-1 || 星 > 所蔵なし CiNii

聴覚障害児・者支援の基本と実際.奥野英子編著.中央法規出版.2008.3.

概説 サポート

聴覚障害にかかわる福祉の動向、社会生活支援の実際・方法など、聴覚障害者支援について事例を交え解説している。聴覚障害関係団体に関する情報も掲載。各章末に参考文献あり。BIB

OPAC2F/長 > 369276/O56 || 4F/星 > 369276/O56 CiNii

C. 雑誌

当館にない雑誌は、記事コピーの取り寄せ(文献複写)や、所蔵する他館での閲覧(紹介状の発行)もできます。詳細はレファレンスデスクへ、お尋ねください。

Audiology Japan.日本聴覚医学会.1968-.

生理学 検査 診断 治療

隔月刊誌。日本語。『Audiology』(1958-1967)から引き継ぎ、刊行されている。治療法、検査法、補聴機器の効果など、聴覚ならびにその障害に関して医学的な立場から研究した論文を掲載した学会誌。「J-Stage」にてPDF本文閲覧が可能。

J-Stage 科学技術情報発信・流通総合システム (http://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)

科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルの無料公開システム。日本国内の学協会の電子ジャーナル、とくに医学・薬学系、工学系を中心を収録している。
抄録、キーワード付き。引用文献リンク(論文の引用文献から、該当文献の抄録または本文へリンクする)、被引用文献リンク(他の論文で引用されている場合に逆引きできる)がある。

誌名検索ボックスで雑誌を検索すると、巻号一覧→目次一覧→目的の論文の本文へと導くことができる。また、詳細検索にて誌名、本文中のキーワードなどから必要な文献を検索することも可能。

OPACバックナンバー室/長 > お || 星 > 所蔵なし CiNii 電子ジャーナルAudiology Japan

Ear and hearing : official journal of the American Auditory Society.Williams & Wilkins.1980-.

生理学 検査 診断 病因 治療

隔月刊誌。英語。聴覚の基礎科学、難聴の心理的要因など聴覚障害のすべての側面をカバーした学術雑誌。
収録文献の検索は、「PubMed」のAdvanced検索を利用するとよい。

閲覧の方法

ア)電子ジャーナル

学内から 学外から

創刊号から最新号まで閲覧できる。

[所在]ASU LAN > e-Journal
[NCID]AA12541105

イ)冊子体
所蔵 Vol. 26-34 (2005-2013)

[所在]バックナンバー室/長 > E || 星 > 所蔵なし
[NCID]AA00179099

『PubMed』Advanced検索
  1. 雑誌名を特定:「Add terms to the query box」で、対象フィールドを「Journal」に選択、誌名「Ear and Hearing」を入力→ 〈ADD〉ボタンをクリック→ 「Query box」に検索式が追加される
  2. キーワードを入力:「Add terms to the query box」で、対象フィールドを「All Field」に選択し、テーマのキーワードを入力→ 〈ADD〉ボタンをクリック→ 「Query box」に検索式が追加される(いくつかの熟語を掛け合わせて検索する場合は、熟語ごとにフィールドを分けるとよい)
  3. 〈Search〉をクリック

II. 情報集め(文献調査)

テーマについて、おおよその内容が理解できたら、次は「I. 下調べ(事前調査)」で集めたキーワードを検索語として、関連文献を探します。まずは身近な図書館から、はじめましょう。それぞれの詳しい使い方や、当館に所蔵がない文献の入手方法は、レファレンスデスクで案内しています。

A. 愛知淑徳大学図書館の資料を探す

目録(OPAC=オーパック)は、当館の図書・雑誌・視聴覚資料などを探すための必須の道具です。OPACでは〈詳細検索〉を上手に使いましょう。とくに〈件名〉は、テーマを絞って資料を探す場合に便利な項目です。

愛知淑徳大学図書館OPAC.

詳細検索で、〈キーワード〉に「聴覚障害」と入力すると、図書182件、視聴覚資料13件ヒットする。〈件名〉に「聴覚障害」と入力すると、図書155件、視聴覚資料8件ヒットする。
〈件名〉に「hearing disorders」と入力すると、図書25件、雑誌11件ヒットする。(2018年5月現在)

●聴覚障害の側面に焦点をあてた検索の例

  • 例1 聴覚障害への支援方法についての資料を探したい
    〈件名〉に「聴覚障害」、〈キーワード〉に「支援」と入力すると、図書9件に絞り込める。
  • 例2 聴覚障害の診断法についての資料を探したい
    〈件名〉に「聴覚障害」、〈キーワード〉に「診断」と入力すると、図書5件に絞り込める。
  • 例3 聴覚の検査についての資料を探したい
    〈件名〉に「聴覚検査」と入力すると、図書8件ヒットする。
    (以上の検索例:2018年5月現在) 

B. 索引・書誌などレファレンス資料を利用して探す

索引や書誌などのレファレンス資料は、研究に必要な情報を広く調べるときに大変便利です。レファレンス資料ではないけれども同じように活用できる資料も紹介します。下調べの段階で集めた情報以外に、もっと情報を集めたい時に活用しましょう。

医中誌Web.

学内から 学外から

医学中央雑誌刊行会が作成する医学文献の検索サービス。医学・薬学・歯学、さらに関連分野の定期刊行物(雑誌)に収録された論文の情報を検索できます。
日本語で英語文献を検索できる機能(PubMed検索)、論文の文書などをそのまま入力して類似検索できる機能(ゆるふわ検索)もあります。

アクセス方法
  1. 利用している端末によって、「学内から」「学外から」ボタンを選択
    *「学内から」・・・図書館のデータベース端末、情報教育センターの端末など、「学内LAN接続」の端末
    *「学外から」・・・Wi-Fiでネット接続の端末、自宅パソコン、スマートフォンなど、学内LAN「未接続」の端末
  2. 〈ログイン〉をクリック
  3. トップ画面の検索画面(論文検索)から検索を開始
    ※ 利用を終えるときは〈ログアウト〉をクリックして終了する
検索例1「成人の内耳性の難聴」を主な主題とする文献
  1. 検索ボックスに「内耳性難聴」と入力
  2. 〈絞り込み条件〉より、〈チェックタグ〉の〈成人〉を選択
  3. 検索ボタンをクリック   
検索例2「検索例1」から、診断に関する文献に絞り込む
  1. 〈検索履歴〉に、検索例1の検索結果((難聴-内耳性/TH or 内耳性難聴/AL)) and (CK=成人(19~44),中年(45~64))にチェックが入っていることを確認
  2. 〈絞り込み条件〉より、〈副標目〉群にある〈診断〉を選択
  3. 検索履歴一覧の下〈履歴プラス検索〉をクリック

J-Dream III.

学内から 学外から

科学技術振興機構(JST)が作成する科学技術や医学・薬学関係の文献情報サービス。書誌事項以外に論文の主題を表すシソーラス用語の付与がなされており、この用語を参考にデータベースを効率よく行う検索ができる。また、抄録も一部閲覧可能である。
医学関係の文献を探す時に有効なデータベースは、MEDLINE(国内海外の医学関連分野の文献情報を収録)、JMEDPlus(国内発行の医歯薬学等の文献情報を収録)の2つ。

●内耳性の聴覚障害をもつ成人に対する聴力測定(国内の論文から探す方法)

  1. ファイル選択画面で〈JMEDPlus〉を選択、〈クイックサーチ〉で検索を開始する。
  2. 検索語を参照して選ぶ
    a. 検索ボックスの左〈JSTシソーラスmap閲覧>を開く。
    b. 検索ボックスに「聴力測定」と入力する。
    c. 「聴力測定」が、ブルーにハイライトされ、シソーラス語であることを確認し、<JSTシソーラスmap閲覧>画面を閉じる。。
    d. <クイックサーチ>画面へ戻り、「聴力測定」と入力し、検索する。

  3. 検索結果を絞り込む
    検索結果が多い場合は、検索窓左下にある絞込みのプルダウンを利用するとよい。検索範囲、発行年、言語、記事区分、発行国などの絞り込み項目がある。再度検索するとよい。

Pubmed

アメリカ国立医学図書館提供の医学・生物学分野の学術文献検索サービス。

●内耳性の聴覚障害をもつ成人に対するリハビリテーション

  1. 画面上部の〈Advanced search〉をクリックし、詳細画面に切り替える
  2. 内耳性聴覚障害(=感音性難聴)を主題とするリハビリテーションについて検索
    Builderの[All Fields]をプルダウンして、[Mesh major topic]に変え「Sensorineural hearing loss」と入力。
    2行目のフィールドの[All Fields]を[Mesh terms]に変え「Rehabilitation of hearing impaired」と入力し、〈Search〉をクリックする。
  3. 対象年齢で絞り込む
    2の検索結果表示画面の左フレームの<show additional filters>をクリックして、<Ages>にチェックをいれ、「 Middle aged:45-64 years」をクリックする。

●そのほか絞込検索の方法

  • 言語の指定 〈Languages〉の該当項目にチェック
  • 文献のタイプの指定 〈Type of articles〉の該当項目にチェック
  • 抄録付きの文献のみを指定 〈Text options〉の該当項目にチェック

III. 有用なサイトやリンク

日本聴覚医学会

概説 検査

日本耳鼻咽喉科学会の関連学会・研究会のうち、伝統のある学会のひとつ。聴力測定技術講習会の開催など、聴覚ならびにその障害に関する研究・調査および知識の普及などを事業目的とし、学術誌『Audiology Japan』を発行している。
サイトには、聴覚、音響についての用語集、オージオグラム作成支援のテンプレートを掲載。

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

概説 治療 サポート

全国各地にある難聴者・中途失聴の立場を代表する組織。難聴者・中途失聴に対する施策の充実普及のための活動、難聴者・中途失聴のコミュニケーション手段等に関する調査研究等、障害者の社会的地位の向上等を目的として活動している。
サイトには、難聴に関する資料集、障害者施策情報、補聴医療の情報などを掲載。