レトリック Rhetoric.

このパスファインダーは、レトリックについて調べるときの、最初の「みちしるべ」として利用できます。

レトリックとは

レトリックとはまず、言説によって人を魅惑し説得するための「技術」として位置づけられてきた。「言説」とは「演説」とか「スピーチ」「言論」など口頭であれ文章であれあるまとまりをもった言葉の集まりであり、「説得」とは言説によって相手の考え方や意思を変えさせ自分の主張を相手に同意させることである。レトリックは単なる言葉を飾るための技術ではないし、暴力・脅迫・買収等の手段を使った主張の押しつけとは別物である。また説得という目的から離れ、もっぱら魅力的な表現そのもの(芸術的あるいは文学的表現)の技術も含む。
(『レトリック辞典』1998, 『レトリック入門 : 修辞と論証』2002, 『レトリック感覚』1992 より)

ファセットの解説

レトリックの全体像をつかむには、主要な構成要素を把握することが近道です。
次の8つのファセット(側面)が、レトリックのガイド(標識)として機能します。

  1. 歴史 起源(古代ギリシア)から現代までの潮流
  2. 理論 弁論術をはじめとする各理論体系、批評理論
  3. 技法 修辞技法の種類・用例など
  4. 研究 特定主題による分析、関連研究
  5. 哲学・宗教 レトリックの思想的展開
  6. 社会 政治・経済・教育等への影響
  7. 文学・芸術 小説・詩・演劇等にみるレトリック
  8. 情報源 目録(書誌)・年表年譜・索引

このパスファインダーは、主に古典レトリックに関する基本的な知識を習得し、関連する有益な情報資源を収集できるように作成しました。レトリックがどのようなものか把握できれば、研究対象を分析するための手法や批評の観点としてレトリックを活用し、映画や演劇、文学作品、広告や映像などに適用することができます。

パスファインダーには、図書館の資料、インターネット上で提供されている文献、データベース、出版情報やリンクなど、選りすぐりの資料や情報資源が掲載されています。

もちろん必要な部分だけを参考にするのもよいですし、これら以外にも情報資源(リソース)はたくさんありますから、図書館員にお尋ねください。

(2005/7/12 ; revised 2022/07)

I. 下調べ(事前調査)

どんなテーマについて調べるときもそうですが、主題に関しての初学者はまず百科事典や主題別専門事典などを調べましょう。このような資料やインターネット上に提供されている情報資源にはもっと詳しく調べるために便利な「参考文献」のリストや、代表的な本、雑誌論文が紹介されていることが多々あります。

A. 百科事典

世界大百科事典. 改訂新版. 2007.

歴史 理論

31巻が索引。「レトリック」 -- 30巻 170-172ページ。関連する見出し語に「詩学」「論理学」「アリストテレス」「キケロ」「クインティリアヌス」「リチャーズ」「バルト」などがある。

NCID:BA83204930
レファレンス[和]/長 > 031/SE22/ウ||4Fレファレンス/星 > 031/SE22/イ

オンライン(JapanKnowledge) 学内から 学外から

The New Encyclopaedia Britannica. 15th ed. 1985-

哲学・宗教文学・芸術BIB

「Rhetoric」 --26巻803-810ページ。関連する見出し語に「Aristoteles」「Cicero」「Quintilian」「Richards」「Burke, KennethDura」「Barthe」などがある。見出し語末に参考文献のリスト、索引の巻、ガイドの巻あり。

NCID:BA07377033, BA20075196
レファレンス[洋]/長 > 033/N68/ア||4Fレファレンス/星 > 033/N68/ア

Aristotle's Rhetoric. 

理論BIB

『Stanford Encyclopedia of Philosophy』の見出し語「Aristotle's Rhetoric」として採録されている。
後に輩出する学者たちに多くの影響を与えたアリストテレスのレトリックについての記述。アリストテレスの著作を読む際のガイドにもなる。参考文献リストもあり。
Rapp, Christof, "Aristotle's Rhetoric", The Stanford Encyclopedia ofPhilosophy (Summer 2002 Edition), Edward N. Zalta (ed.).

B. 辞書・ハンドブック

レトリック辞典. 1998.

歴史 理論 技法BIB

「文彩(修辞学)と議論法(弁論術)の辞典」。レトリックの概観を知るには見出し語「レトリック(定義)」「レトリック(部門)」「レトリック(歴史)」のもとを読むとよい。星が丘分館は第2刷(2000)を所蔵。見出し語「レトリック(部門)」ではキケロのレトリック五分科を解説する。巻末に参考文献のリスト、英語述語表および仏語述語表あり。

NCID:BA36103188, BA48596639
レファレンス[和]/長 > 801/N97||4Fレファレンス/星 > 8016/N97

A Glossary of Rhetorical Terms with Examples. 

技法

米国ケンタッキー大学のサイトで提供。レトリック用語の定義と用例を示す。

Encyclopedia of Rhetoric.

歴史 理論 技法BIB

Sloane, Thomas O.編集による修辞学の本格的な百科事典『Encyclopedia of rhetoric』(Oxford University Press, 2001)のオンライン版。各見出し語に詳細な語釈とBibliographyが付されている。

C. 代表的な本

レトリック入門 : 修辞と論証. 2002.

理論 技法

レトリックにおける「文彩」と「議論法」を、説得の観点から、体系立てて説明する入門書。巻末に索引およびレトリック関連文献リストあり。NCID: BA59876284

 8016/N97
 書庫B/長

レトリック感覚. 佐藤信夫著. 1992.

技法BIB

レトリックの各手法についてとりあげ、どのようなものか定義した上で、事例をもとに具体的に分析をして説明する。巻末に用語集および主な引用文献のリストあり。

NCID:BN07709532
文庫・新書/長 > コウダンガク/1029||4F/星 > 801/S85-2

旧修辞学 : 便覧. 新装版. 2005.

歴史 理論 技法

ロラン・バルトの邦訳。修辞学入門書。

NCID:BA7099865X
書庫D/長 > 8016/B25

一般修辞学. 1982.

理論 技法

修辞学の基本文献として定評のある『Rhétorique générale』(1970)の全訳。修辞学の学際的分析・研究を目的に、言語学、文学をはじめ美学、映画学、心理学等の研究者によって構成されたグループが執筆を担当。文学のみならず広告、映画、漫画等にも有効な概念を提示している。巻末に事項・人名索引あり。

NCID: BN00491429
書庫D[和] /長 > 8016/G88||4F/星 > 8016/G88

D. 雑誌論文

レトリック /コミュニケーション理論の展開の軌道をたどって:覚え書き6篇<スピーチ・コミュニケーション学の紹介4>.徳座晃子著.

理論

『東京経済大学人文自然科学論集』のNo.61(1982)に掲載。レトリック理論の展開を、表明者ごとに概観する。これらを踏まえた上で、20世紀のコミュニケーション理論を述べる。文献リストつき。

NCID:AN00159446
B2紀要/星

E. 雑誌

思想.

歴史 理論哲学・宗教

月刊。541号(1969年)から所蔵(欠号あり)。682号(1981.4)はレトリック特集号(682号は当館所蔵なし)。707号(1983.5)から722号(1984.8)において連載記事「<意味の弾性>レトリックの意味論へ」が掲載されている

NCID: AN00104091
バックナンバー室/長

Quarterly journal of speech.

歴史 理論 技法 研究社会 文学・芸術

季刊。第1巻(1915)から所蔵。雑誌のページで89巻(2003)以降の記事について抄録まで無料で見られる創刊号以降の目次を確認できるほか、一部の記事は本文、抄録の閲覧が可能。
1-71巻(1915-1985)まではマイクロリールで所蔵。77-90巻を冊子体で所蔵している。

NCID: AA00365978
バックナンバー室/長

Rhetorica : a journal of the history of rhetoric.

歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術

季刊。国際レトリック史学会(International Society for the History of Rhetoric)編。Vol.13(1995)-Vol.34(2016)まで冊子体で所蔵。
レトリックの理論と実践、および詩・哲学・宗教・法との関係などについて考察した論文や書評を収録している。
発行元University of California Pressのウェブサイトで目次、抄録を確認できる。

NCID: AA10700310
バックナンバー室/長


II. 情報集め(文献調査)

A. 愛知淑徳大学図書館の資料を探す

身近にある図書館の資料に自分が集めようとしている文献や情報があるのかどうかを調べましょう。*図書館資料を調べるためのオンラインツールのことを、”OPAC(オパックまたはオーパック)”と呼びます。

愛知淑徳大学図書館OPAC.

歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術 情報源

特定の主題に限定して図書館の資料を探す時には、「詳細検索」画面の項目にある〈件名〉の欄に、資料の内容を表す言葉「件名」を入力すると効果的です。特に詳細な主題を表現することができる『LCSH(米国議会図書館件名標目表)』に基づいた件名での検索は、OPACを利用する際だけではなく、海外の目録やデータベースを検索する場合にも役に立ちます。件名のしくみについては、「件名と分類」のページをご覧ください。

1. 図書館サイトのトップページの、「OPAC検索」横の「詳細検索」をクリックする。
2. 〈件名〉で検索する。:「修辞学」では54件、「rhetoric」では図書が570件、雑誌が5件ヒット「Rhetoric, Ancient」では21件ヒットする。〈著者名〉に「佐藤信夫」と入力して検索すると33件ヒットする。「波多野完治」では62件ヒットする。「中村明」79件、「ロラン バルト」では52件、Barthes, Rolandでは70件、「ケネス バーク」5件、(2022年6月28日現在)
検索語はコピー&ペーストして使うと便利

B. レファレンス資料(書誌、索引、抄録、データベース)を利用して探す

レファレンス資料は研究に必要な情報を広範囲にわたって調べるための必須の道具です。

MagazinePlus マガジンプラス.

学内から 学外から 歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術 情報源

一般誌から専門誌、大学紀要、海外誌紙まで収録した日本最大規模のデータベースです。国立国会図書館(NDL)の「雑誌記事索引」データのほか、「雑誌記事索引」ではカバーしきれない年報類・論文集や、一般誌などを追加・収録しています。明治期から現在まで一括して検索できる。(日外アソシエーツ『MagazinePlus』のページから)

アクセス方法

利用している端末によって、「学内から」「学外から」ボタンを選択
*「学内から」・・・図書館のデータベース端末、情報教育センターの端末など、「学内LAN接続」の端末
*「学外から」・・・Wi-Fiでネット接続の端末、自宅パソコン、スマートフォンなど、「学内LAN未接続」の端末

検索方法

上部の検索窓に、検索語を入力して検索する。
「レトリック」と入力して検索すると1769件ヒット、「修辞学」648件、「修辞法」186件ヒットする。「レトリック アリストテレス」では6件、「レトリック キケロ」5件、「レトリック クインティリアヌス」2件ヒットする。(2022年6月28日現在))

Recommended readings in rhetoric. 

歴史 理論 技法 研究

米国Brigham Young Universityのサイトで提供。『Silvarhetoricae』というサイトの一部。レトリック研究の際のおすすめ文献を紹介文付きでリスト化。

MLA international bibliography with full text [ Modern Language Association ]  (EBSCOhost)

学内から 学外から 歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術

MLA(Modern Language Association 米国現代語学文学協会)による言語学、その周辺領域研究に関する文献データベース。
1926年以降に発表された学術雑誌の論文記事や書籍、レポート、学位論文等の文献データを収録。。一部の文献は全文の閲覧・ダウンロードが可能。検索の際は独自の件名である「MLA Thesaurus」を用いると良い。

  1. EBSCOhostでデータベースが『MLA International Bibliography with Full Text』に選択されていることを確認し、画面上部の<MLA Thesaurus>をクリックする。
  2. サブジェクトの検索ボックスが表示されるので、<次を含む用語>を選択した上で「Rhetoric」と入力し検索する。
  3. 検索結果の中から「classical rhetoric」を選択し追加ボタンを押すとEBSCOhostの検索ボックスに用語が入力される。
  4. 検索をクリックすると「classical rhetoric」を件名に持つ文献407件がヒットする。

同じ要領でサブジェクト「rhetorical criticism」を選択して検索すると483件、「political rhetoric」で541件、「history of rhetoric and composition」で1,322件がヒットする。出版時期やソースタイプなどで絞り込むことが可能。(2022年7月11日現在)

C. 他の図書館の資料を探す

NDL ONLINE 国立国会図書館オンライン : 国立国会図書館蔵書 検索・申込システム.

歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術 情報源

国立国会図書館の所蔵資料および利用可能なデジタルコンテンツを検索して、資料の閲覧や各種の申込みができるサービス。
国立国会図書館 は日本の出版物を網羅的に収集している納本図書館であるため、当館にない資料も見つかります。図書や雑誌ほか映像資料や障害者向け資料など多様な形態の資料、さらに雑誌記事も同時に検索できます。 検索結果が多い場合は、画面左フレームの絞込項目を利用すると良いでしょう。

検索例

主題に絞った検索をする場合、〈詳細検索〉をクリックし、〈件名〉の項目にNDLSH(国立国会図書館件名標目表)などの標目形で検索するとよい。
「件名」はその資料がもつテーマを表し、「件名」で検索することで、例えば「修辞学」について書かれていてもタイトル中にそれらの言葉を含まない資料も検索できる。
国立国会図書館の件名標目表(NDLSH)は『Web NDL Authorities』で検索することができる。

  1. トップページの検索ボックスに表示されている<詳細検索>をクリックする。
  2. 詳細検索画面が表示される。「件名」の欄に「修辞学」と入力して検索ボタンをクリックする。和図書115件、洋図書31件図書209件、雑誌記事49件など全266件(オンライン資料18件含む)のデータがヒットする。
  3. 同様に「rhetoric」では和図書92件、洋図書が225件図書529件、雑誌記事255件など全786件(オンライン資料19件含む)ヒットする。(2022年7月11日現在)

WorldCat Discovery Services[ワールドキャット ディスカバリー サービス]

学内から 学外から 歴史 理論 技法 研究 哲学・宗教 社会 文学・芸術 情報源

米国オハイオ州ダブリンに拠点がある共同目録作成体(書誌ユーティリティー)WorldCatが収録する多様な資料データや、各種契約データベースを一括で検索できるディスカバリーサービス。本学の所蔵だけではなく、世界中の参加館が蓄積した資料データを検索することができる。

図書館ウェブサイトトップページの〈ディスカバリー〉タブをクリックし、〈詳細検索 Advanced Search〉を選択。
検索インデックスのプルダウンから〈件名フレーズ〉を選び、検索語を入力する。
検索語として使用する件名は、世界標準である『LCSH(Library of Congress Subject Headings)米国議会図書館件名標目表』や『国立国会図書館件名標目表(NDLSH)』などを参考にすると良い。

「Classical rhetoric」で 記事・章4,129件、書籍97件、アーカイブ資料10件、コンピュータファイル3件など、「Rhetoric, Ancient」で書籍6,790件、記事・章170件、コンピュータファイル97件、アーカイブ資料38件など、「Rhetoric and psychology」で書籍403件、記事・章11件、オーディオブック7件、アーカイブ資料6件などのヒットがある。

ヒット件数が多い場合には、キーワードを掛け合わせるか、画面左フレームの絞込項目のフォーマット、内容、年、データベース、言語などを指定して絞り込むと良い。(2022年7月11日現在)


III. その他の有用なサイトやリンク

American Rhetoric.

技法社会

世界中のリーダーによるスピーチの音声・動画、テキストファイルなどをまとめたサイト。演説者、修辞技法などによって分類されており、必要な情報を探しやすい。関連分野の雑誌や団体・学会等のリンク集も掲載している。

Rhetoric Society of America.

情報源

アメリカ・レトリック学会(RSA)のウェブサイト。
〈Resources〉のカテゴリ内にレトリックに関する情報資源へのリンク集『Scholarly Resources』がある。「Journals」「Scholarly Link」「Archives and Libraries」「Bibliographies and Encyclopedias」「Classical Rhetoric Texts」など11ジャンルの情報資源が紹介されており文献探索の際の参考になる。
また学会誌『Rhetoric Society Quarterly』Vol.30(2000)以降の目次・抄録も公開している。