電子情報環境下における学術出版 1999年訪問調査
◆訪問調査の目的
・ 学術雑誌をテーマに、その編集プロセスを学び、電子情報環境の変化 における今後の方向性を探る。
・ 日本の学術情報の国際化や、日本からの情報発信の現状に触れる。
・ 文献を読むだけではなく、実践的な視点から学術情報メディアやコミ ュニケーションを理解する。◆訪問調査の意義
論文や講義では得ることのできない現場の方々からの多彩な知識と情報、また人との接触ばかりでなく、作業をしている現場の見学や編集におけるいろいろなデモンストレーションを受けることで、より自分に吸収しやすくなった。基礎的な疑問でも専門の方のわかりやすい答えを得ることでより理解を深めることができた。また夕食を情報管理編集部の方々やエルゼビアサイエンスの小山内氏、順天堂大学図書館の青木氏(医学図書館現編集委員長)などと一緒に楽しく過ごせたことは何よりの感激だった。
◆日程と訪問機関の概要(□)・訪問見学内容(■)
2月25日(木)
□科学技術振興事業団・『情報管理』編集事務局 コンタクトパーソン: 森田歌子氏,新名真紀子氏 ,浅野光基氏
JOISやSTNの提供をはじめとするオンラインサービスや出版物サービスなど科学技術情報の流通、基礎的研究の推進、新技術の委託開発・斡旋などの技術移転事業、研究交流や研究支援事業、科学技術理解増進のための情報システム技術の開発や科学館などの活動支援事業といった大きく6つの事業分野を推進すべく1996年に設立された。
■『情報管理』SGML編集システムについて・SGMLシステムデモンスト レーション
SGMLを用いた編集システムは、従来の紙媒体を最終目標にしたCTS(computer type setting)方式ではなく、インターネットでの電子提供を実現するためのシステムである。その実際をワークステーション上で実感的に見せてもらうことができた。2月26日(金)
□エルゼビア・サイエンス コンタクトパーソン:小山内正明氏 1880年にオランダで創立した、学術出版中心の商業出版社であり、現在約1200種の学術雑誌を出版している。また現在は冊子体から電子ジャーナル(フルテキスト情報提供)、電子図書館構築に力を入れている。
■エルゼビア全体の説明・WWWによるサイエンスダイレクトのデモンス トレーション
サイエンスダイレクトは同社が出版する1000タイトル以上の学術文献のフルテキストデータベースである。また電子図書館についての基本的な考え方や必要なステップについても説明してもらえた。
□学会誌刊行センタ− コンタクトパーソン:福井正己氏
人文・社会・自然科学などさまざまな分野の学会誌の編集・製作および、これに付随した業務の委託を請け負っている。その流通状態は各学会に属する会員への配布が主である。
■「査読システムとフォーム・組版データの有効利用」について
査読から、印刷、Web発信までを一貫したDTP(Desk Top Publishing)で行っている学術雑誌JJP(Japanese Journal of Physiology)の例を挙げながら、学術雑誌の編集の流れについての説明とデモンストレーション。
□学会出版センター コンタクトパーソン:宮崎継夫氏
英文で国内の学術成果を図書として海外に流通させることを目標に設立された。東大出版会を母体として展開されたもので、学術雑誌の編集制作を共同化して行う学会誌刊行センターとは兄弟にあたる。
■「日本の英文出版の現状とその課題」について
日本の海外依存型の論文投稿からの脱出や、学会全体の質の向上と海外への情報発信の推進などの問題と今後の課題について、講義していただいた。
◆訪問調査に参加して
◆『情報管理』編集事務局では、著者が論文投稿する際からデジタルなデータのやりとりがされており、編集者だけがシステムと関わっているのではなく、著者も深く関わりがあることとなる。またSGML文書によって、編集作業の軽減、期間の短縮、経費の節減ができ、物理的な「もの」と「ひと」の動きを少なくすることができたという。またそれだけでなくSGMLシステムは情報共有のための検索しやすいデータベースの構築が目的であるということがわかった。
◆エルゼビアサイエンスと学会誌刊行センターの電子ジャーナルへの取り組み方の違いに大変興味を持った。海外では商業機関が学術雑誌を出版している方が大半を占めているが、日本では各学会が出版している。その背景から見ても、エルゼビアサイエンスでは積極的にユーザーへ新しい情報提供手段の一つとして取り入れており、実際にフルテキストの状態で提供している他、電子図書館の構築へも、他出版社との相互協力の必要性など前向きな考えを示していた。一方日本の学会誌刊行センターは、各学会の学術雑誌を出版しているものの、実際は各学会に主導権があるため、統一化や決定権の問題から、今一歩電子ジャーナルへの道を難しくさせている要因となっているのではないかと考えられる。
◆学会出版センターの宮崎氏の話を伺い、日本から海外へも情報発信し、日本にも国際的学術雑誌(インパクトファクター値から見ても)を作るためには、オリジナリティ、表現能力の向上、海外依存からの脱却、研究者・学会の体質改善、行政の取り組み拡大、電子情報化という環境作りなど数々の問題を克服していかなければならないということがわかった。
◆同じ出版社・出版センターでもこういった外部からの訪問に際して、デモンストレーションやプレゼンテーションの仕方に違いがあり、そういったところでも非営利機関と営利機関との相違を感じられた。
◆訪問調査を行なったあと、ゼミ内で「テキスト形式による電子投稿」という規定のみでレポートを提出し、編集して冊子にまとめることとなった。フォントやフォーマットを規定しておかなかったため、初の編集作業ということも手伝って編集はかなり大変だった。このDTPの体験により、フォーマット的にも内容的にも統一され、質の高いものを作るということは本当に大変なことだということを実感できた。
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