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図書館サイトのリニューアルで考えたこと

2009-04-17

4月1日に図書館サイトをリニューアルしました。

〈ベータ版〉としたのは、旧ページをすべて更新できなかったからです。加えて、グーグルがそうであるように、サイトの使い勝手がよくなるしかけがあれば、随時導入していくという(永遠に完成がない)前向きさも込めたつもりです。
さらに「ここで先延ばしにすると、また更新ができなくなるかも」というためらいを「えぃ」と越えたい気持ちもありました。

経緯

今回のリニューアルは、急のことではありません。2003年の全面改訂から6年が経過し、ここ数年は年度当初の業務計画に挙げながら、達成できない懸案でした。
そして昨年2008年9月、「ウェブサイトの評価と改善」をテーマとした研修の講師を務めたことが、きっかけになりました。

詳細は『2008年度図書館実務担当者研修会』の〈ワーキングB〉をごらんください。

この研修で参加者は自分の図書館サイトを評価し、その改善をめざして作業していただきました。講師として、その立場を自分のこととするのは当然です。

秋からしばらくは、改訂作業に着手できず。2月に取りかかってからは、研修で整理されていたこともあり、短時間でかたちになっていきました。
機が熟していたのでしょうね。
リニューアルしたいと考え続けていたから、サイトに入れる機能はすぐに頭に浮かびました。

今回は大きく変わったように見えるでしょうか。

技術的には、5-6年前からインターネットの大きな部分を占めるようになったブログのしくみとして普及したテクニックをはじめ、5-6年前の一般レベルをようやく導入できたにすぎません。だからサイト作成で実践する方々の記録やガイドが、ネット上のあちこちにあるようなテクニックばかりです。そうした文章には、勇気づけられ助けられました。
私自身は「新製品・カレーヨーグルト」とあれば、つい買って食べたりする新しもの好きです。でも自分の手に負えない新しい技術をサイトに導入するつもりはありませんから。
(急いで付け加えれば、100%理解したことのみで作らないのは、例えばウィンドウズのしくみを100%知らずに、あるいは、完璧な完成品ではないアプリケーションを仕事で使っているのと同じことです。)

お世話になったサイトなど

サイトの骨格は、ドイツの『YAML』によります。このサイトは『MOONGIFT』「複雑なWebサイトデザインを容易に実現するテンプレート「YAML」」という記事に教えられました。『MOONGIFT』は「オープンソース・フリーウェアを毎日紹介するブログ」で、興味深い事例を紹介してくれる貴重な情報源のひとつです。

上で作った骨格をもとに「Adobe Dreamweaver」のテンプレートを用いて、個々のページを作りました。テンプレートを修正するだけで、そのテンプレートから派生したファイルすべてに反映できる機能です。これはかなり便利。

トップページ以外のメニューバーは、『Yahoo! User Interface Library (YUI)』〈Menu〉を利用しています。

最初、カレンダーをウェブサービスで何とかしたいと思って、調べていたときに検索結果に出たひとつでした。(YUIの存在自体は知っていました。)一般のカレンダーはYUI以外にもいろいろありましたが、当館の閉館日や特別開館日を簡単に編集してオリジナルカレンダーが作成できるものは、ちょっと見あたりません。(グーグル・カレンダーはデータが外部に置かれるので避けた。)

YUIのメニューは、多くのサイトで使われていることがわかり、さまざまな解説サイトが参考になりました。いちいち思い出せなくて申し訳ありませんが、解説を書いてくれた方々に深く感謝したい。

またトップページのニュースは『Google AJAX Feed API』の〈Dynamic Feed Control〉を基本に作成しました。これも多くの解説サイトがあり、重ねてこれらの方々に感謝を申し上げます。

さらに『愛知淑徳大学図書館 News』と『司書の目と耳』は、rssの発信を追加することが主目的でした。一般的なブログはサーバに必要な条件があるし、ちょっと無理。ローカルでブログを書く『Thingamablog』というアプリケーションを見つけ、試用しています。これは運用に発展性もあるようですけれど、ここでは触れません。このあたり、『Thingamablog メモ』が大変参考になりました。ありがとうございます。

新しいコンテンツをつくりたい

デザインというのは「知識」や「教養」と同様、「それを知ったり体験した後では、それ以前には戻れない」ものではないでしょうか。そう考えると、新しいデザインにする意義は、今までにはないコンテンツを作るところにあり、同時に従来の何かを捨てることでもある。大げさにいうと「パラダイムが変わる」に近いかな。

技術的には前記の通りですが、展開したいことを次に書きます。

(1)さがす Search

サイトの大項目の最上位に置いた項目です。中身はまだ無い。
この「さがす Search」をポチッとすると、「利用者のさがす作業がはかどる何か」があるといい。トップページにOPAC検索を置いたのも、この一環です。

「さがす」には3月に出した『レファレンスサービスのための主題・主題分析・統制語彙』で書いたことも踏まえるべきでしょうね。イメージは、単なるリンク集や契約データベース等の一覧ではなく、メタ・パスファインダーのようなもの……。どんなページがよいのだろう。

いずれにしても「とりあえずの何か」で、埋めるわけにはいかない。能力のなさをさらすことになっています。

(2)ヘビーユーザーに優しい

使うデータベースが決まっている利用者には、できるだけクリック数が少なくなるように構成したつもりです。どのページからも、契約データベースや基本的な情報源に、ワンクリックでアクセスできた方がよい。
そのために、このメニューバーを採用したのです。またフォームも多用しましたが、トップページの「うるささ」は改善の余地ありです。

(3)RSSを発信

RSSを発信しないでいるのは、新着情報を読んでもらう気がないと受け取られる世の中と感じています。だから実現したかったのです。トップページにニュースを流すしかけにも使っていますが、実はこちらが主役かも。

(4)FAQ よくある質問集

整理されたFAQは、相当に使えるツールになると思う。だってQ&Aサイトって結構見ませんか?図書館運営の手の内を見せることにもなりますが、いいFAQは図書館をより上手に活用する利用者をサポートすると思う。
これもまだ無い。 印刷したパンフレット、ワードなどで作成した各種書類がある。これらを編集して「このときにはこうするとよい」という情報を、少しずつでも発信したい。

リニューアルしてみて

ブラウザによって表示が異なる現象がある等、当館スタッフからの提案を、いろいろといただいている。大変ありがたいことです。
そこで痛感するのは、このサイトの不完全さである。
(もちろん技術的な能力が欠けていることも大いにあります。)

例えば、前とほぼ同じなのに意見が出るのは、以前から問題があったのです。あるいは、従来あった「とりあえずの何か」を変更したけれど、それはないよりまし、だったのでしょう。
しかし利用者を不適切にナビゲートする(その方法を示してしまう)ことは、長い目で見て図書館とその業界にとって、マイナスではないかしらん。
あるいは、最近のデータベースは、かなり個人向けのカスタマイズが可能です。そうした機能を備えたデータベースを紹介するときに、(1)単にトップページにリンクさせるだけ、(2)図書館がある程度カスタマイズした入口を提案、このどちらが適切なのか迷います。この種の機能は増える一方でしょうし。
こういうものは、よく調べて使ってみて、使い勝手を熟知しなければ何ともいえません。その上で「あえて一つの方法に絞って提案するページ」を作るとしても、長所短所を説明しておきたい。相当の手間隙がかかりますが、これが図書館員の仕事。また日本語ページがある場合は無条件にそれを奨めていますが、留学生への配慮も忘れてはいけません。

図書館サイトはパブリックサービスに入るのですけれども、実のところ、広報の担当者、パブリックサービスの担当者だけでは、きめ細かく配慮したサイトには至りません。

FAQで「図書館の手の内」と書きましたが、図書館の専門知識と経験の技を、わかりやすく示すことができれば、と思います。理想は、スタッフそれぞれができる範囲で、図書館員としての知識と経験を表現することでしょうか。文章、絵や図、音声、映像を作ること。
それらを的確に編集すれば、使い甲斐があるサイトになるような気がします。(ほんとうにどれだけ時間と労力のかかることでしょう!)

そうだとしても「それを必要とするひと」は、求めるコンテンツが提供されていれば、見かけや使いやすさがどんなにひどくても、繰り返し利用する。そうも思う。だから何とかしたいのです。

このサイトの更新がいつ一段落するのか、ちょっとメドがたちません。一段落などつかないと思っていた方がよいかも。利用者の求める資料を利用者に提供するために、図書館サイトが備えるべきコンテンツは何でしょうか?
考え、試し、改良することは、これからも続きます。

Categories: Google, 研修, 図書館サイト

「図書館広報とインターネット:ネットの効率的な使い方から考える」

2006-11-16
朝、ポッドキャストで『タチヨミスト★SHINGOさんの週刊誌チェック!』を聞いていたら、「ブルータス 2006/12/6号」に映画の〈登場人物職業別インデックス〉があるというので、早速確認した。司書はなかったけど、広告マン、修復師、美術館員、本屋などがありました。
こういう目録があると、目録を読みたくなるよね。Worldcatだとある程度の情報が件名(Subject)に入っているから検索できるのもあるよ。→修復師

今週火曜日に私立大学図書館協会の東海地区協議会「研究集会」で、上記タイトルの研究発表を行った。この回はそのときに紹介したサイトなどを書いておきます。参考にしていただければ幸いです。
本当は昨日更新したかったのだが、熱が出てしまい、1日ずれてしまいました。

発表のサブタイトルを「ネットの効率的な使い方からサービスの種(たね)を考える」とすれば、もう少しわかりやすかったかも、と後から思った。ネット利用者の使い方とか、こんなサービスをつかうとタダでこれくらいできる、など、ちょっと役に立ちそうなコツだけど図書館から公式にアナウンスするには不十分、といった話だったからである。長期展望やセキュリティの面で不安はゼロではないが、あったら便利ということを紹介したつもりである。内容は

  1. はじめに 広報とは?;2つの図書館入口:リアルとバーチャル
  2. インターネットの効率的な使い方 RSS;ブラウザ側でページを変える、日本語化
  3. まとめ

で、もちろん〈2〉が中身だ。

●サイト一覧(▼は時間切れで紹介できなかったサイト)

  • Bloglines(ブログラインズ)  http://www.bloglines.com/
     ウェブでサービスしているRSSリーダー 無料
  • iTunes(アイチューンズ)  http://www.apple.com/jp/itunes/index.html
     アップル社の提供する音楽ソフト 無料
  • Firefox(ファイアフォックス)  http://www.mozilla-japan.org/products/firefox/
      機能をカスタマイズできる、タブを使ったウェブブラウザ 無料
  • Greasemonkey(グリースモンキー)  http://greasemonkey.mozdev.org/
      Firefoxのアドオン(機能拡張)で、ウェブページを「見る側」で変える 無料
  • Firefoxまとめサイト:Greasemonkey  http://firefox.geckodev.org/index.php?Greasemonkey
      Greasemonkeyを日本語で解説している
      ※「まとめサイト」という用語はネット上でよく使われている。
  • Japanize  http://japanize.31tools.com/
      Firefoxのアドオン(機能拡張)で、外国語のウェブサイトの見かけを日本語化する 無料
  • Connnotea(コノテア コノティー)  http://www.connotea.org/
     ネイチャー社の提供する、ウェブでサービスしている無料の文献管理ツール
  • CiteULike(サイトユーライク)  http://jp.citeulike.org/
     ウェブでサービスしている無料の文献管理ツールで日本語版あり
  • RefWorks  http://www.sunmedia.co.jp/e-port/refworks/index.htm
      ウェブでサービスしている文献管理ツールとしては最も有名 有料 導入大学あり
  • EndNote Web http://www.isiwebofknowledge.com/endnoteweb/
      文献管理ツールで最も有名なソフトのウェブ版 日本語の案内  カレントアウェアネスR
  • ウィキペディア Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/
     ポッドキャスティングRSSRSSリーダーなど
  • ▼平田大治「RSSの未来」オームブレテン 2005秋 vol.41
  • ロケットブーム  http://www.rocketboom.jp/
     最も有名なビデオブログのひとつ リンクは日本語版
  • TBSラジオのポッドキャスティングのサイト  http://www.tbsradio.jp/
     現時点で国内で最もポッドキャスティングに力を入れているラジオ局
  • ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)ブログ版  http://d.hatena.ne.jp/arg/
     インターネットの学術利用をテーマにした専門サイト ブログの一例
  • News feeds from the BBC http://news.bbc.co.uk/2/hi/help/3223484.stm
      BBC(英国放送協会)のニュースフィードを解説したページ
  • カレントアウェアネスポータル  http://www.dap.ndl.go.jp/ca/
     国会図書館による図書館に関する調査・研究のページ
  • 農林水産関係試験研究機関 総合目録  http://library.affrc.go.jp/
     RSSを使ってサービスしている例 ▼『情報管理 49(1) 2006/4』 に関連記事あり
  • natu_nの日記  http://d.hatena.ne.jp/natu_n/
     Greasemonkeyをつかったアマゾン→OPACリンクをつくっている
  • MediaLab Love http://d.hatena.ne.jp/Koumei_S/
      Greasemonkeyをつかったアマゾン→OPACリンクをつくっている
  • 「図書館Web」  http://www.yasuhisa.com/could/
      はじめにGreasemonkeyをつかったアマゾン→OPACリンクを紹介した長谷川氏のページ
  • 文字列のユニコードエスケープ  http://piro.sakura.ne.jp/latest/entries/mozilla/xul/2005-09-28_unicode-escape.files/unicode.xul
      アマゾンからのリンク作成時に便利 入力したテキストを文字参照に変換してくれる
  • Examples of RSS from the Catalog   http://www.libsuccess.org/index.php?title=RSS#Examples_of_RSS_from_the_Catalog
    北米の図書館システムでRSSが利用できるもの
  • 国際目録原則覚書  http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/kokusaimokuroku2005.html
      フランクフルト原則について書いてある国会図書館のページ
  • RDA: Resource Description and Access  http://www.collectionscanada.ca/jsc/rda.html
      AACR2の改訂版で2008年に出版予定のRDAのサイト

ところで発表の前日、カレントアウェアネスRで「オランダ・Ticerの研修「電子図書館アラカルト」」という記事を見つけ、気になるのでチェックしたら、「Module 2: Hands-on: Library 2.0 technologies to reach out to the customer」のなかに、Levineというひとが結構似た話をしていた。自分の発表とくらべて時間があるなぁと(1時間半×2)思ったら、やっぱり、こちらは時間が足りなくて説明が十分できませんでした。前回に引き続き、すみません。
今回の話でお尋ねになりたいことがあれば、どうぞお知らせください。

■Jenny Levine「Engage Your Users with Blogs and RSS: Create Community, Take Your Content to Them」パワーポイントをPDFにしたもの(23MB・かなり大きい)

Categories: インターネット, ネット書店, 研修

選書・発注・受入業務をいかに効率的に進めるか?

2005-07-13

見出しのようなタイトルの文章を『館灯 第43号 2004』(2005.3)に書きました。昨年度の研究集会で行った発表をまとめたものです。発表の時には十分でなかったところも残らず書いたつもりですが、さまざまな暗黙の前提(私個人の信条、当館や大学特有の前提)を説明なしで書き進めているところがあると思います。わかりにくい部分についてはご質問ください。

内容は、発注データ作成を丸善の『KnowledgeWorker(KW)』で行い、それをリコーの『LIMEDIO』に一括で登録して運用している、当館のしごとについて、特にデータを受け渡すときの加工にファイルメーカー・プロを利用しているところが中心です。KWのサービス内容や図書館システムが変わっても対応できるように、と考えています。

なお今回目次を作ってみました。ほかにもリンク切れの修正や追記など、何ヶ所か、過去の文章に手を入れました。

■関連→私立大学図書館協会西地区部会東海地区協議会『館灯』はここの年報です。ISSN: 0387-3919)

Categories: 研修, 受入, 選書