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閉店する2つの書店

2015-12-28

2015年12月、筆者のよく知る2つの書店が閉じる。

ひとつは地下鉄東山線「一社」駅の駅前で、40年続いた「文京堂書店」だ。12月31日をもって閉店する。20年くらい前、この近くに住んでいたことがあり、当時はお世話になった。

西隣の「星ヶ丘」駅の「栄進堂書店」も11月に移転して、「東山公園」駅が最寄り駅となった。

高度成長期以降、名古屋の東部丘陵に開かれた住宅地から、中心地へのアクセスに利用されるのが地下鉄・東山線だ。その路線の「星が丘」から先の駅前から、普通の本屋がなくなってしまった。店じまい/営業中それぞれの売り場面積が分かると、別の観点が出るかもしれない。

東山線全駅の1日あたりの乗降客数と、駅前に本屋があるかどうか(有=○、無=×)を一覧にしてみた。

高畑 21,166 ○
八田 12,324 ×
岩塚 16,393 ×
中村公園 22,888 ○
中村日赤 8,945 ×
本陣 14,279 ○
亀島 8,457 ×
名古屋 258,248 ○
伏見 59,764 ×
栄 151,454 ○
新栄町 27,009 ×
千種 51,567 ○
今池 25,307 ○
池下 27,230 ○
覚王山 18,846 ○
本山 22,791 ○
東山公園 15,297 ○
星ケ丘 51,249 ×
一社 28,110 ×
上社 22,735 ×(ブックオフ、ツタヤ有)
本郷 23,348 ×
藤が丘 58,849 ×
乗降客数:『平成26年版名古屋市統計年鑑』の「11.運輸・通信」にある乗車人員を2倍し、それを365(日)で割り、四捨五入した。

もうひとつの書店は、名古屋一番の繁華街・栄に長く店を構える、丸善名古屋栄店だ。かつての丸善名古屋ビルにあった店を引き継いだ老舗で、丸榮百貨店の6・7階へ移転していた。そこが、11月23日に7階を休止、12月25日に6階が休止となった。

11月の新聞報道では「丸善、丸栄から12月下旬撤退 「名古屋本店」に集約」(中日新聞・11/21朝刊)「丸善、名古屋・丸栄から撤退へ  栄の3店を2店に集約」(朝日新聞・11/22朝刊)とあったが、少し後の中部経済新聞(12/3)に「丸善ジュンク堂書店  名古屋・栄で新店舗を計画」という記事が出ている。

新聞記事と、2015年2月1日に丸善書店とジュンク堂書店は合併して「株式会社丸善ジュンク堂書店」となったこと、さらに店内の張り紙から、気づいたことがある。以下は、その推測である。

「丸善名古屋栄店」は閉店(撤退)と報道されているが、事実上は移転で、何らかの理由から屋号を変えて「ジュンク堂書店(名古屋栄店?、あるいは昔の呼び名なら、名鉄栄メルサ店?メルサプラッツ店?だが、両方とも既に存在しない)」となるのだろう。25日に店じまいした丸善名古屋栄店は、百貨店の高層階で、かつ閉店が午後7時(この時刻は勤め人が立ち寄るには早い)という状況だったから、丸榮サンには申し訳ないけれど、よい場所があれば移転は当然でしょう(名古屋栄店が移転したときの諸事情を知らないままでの憶測ですが)。

1月に開店する「明治安田生命名古屋ビル」の地階(B1・B2)は、栄地下街のメインストリートから一歩入っており、この場所が繁盛していたかどうか(筆者があまり利用しないところだったから)よく知らない。ただし広さの記憶はあって、丸榮の2フロア(6・7階)と同程度か、少し大きい店となるはずだ。

そこまで考えたら、名古屋駅前の地下街にかつてあった、書店同士の関係との類似性に気が付いた。思い出せる人だけがわかる表現で恐縮だが、地下鉄東山線・名古屋駅の改札に最も近い書店だった〈ダイナード〉入口の「日進堂書店」と、〈テルミナ〉地下2階の「三省堂書店」の関係が連想されるのだ。つまり、こう。
・日進堂書店@ダイナード = トキワ園書店@森の地下街
・三省堂書店@テルミナ  = ジュンク堂書店?@明治安田生命名古屋ビル地階
類似するなら、名古屋駅地下街のテルミナに三省堂書店が開店したときに匹敵するインパクトかもしれない(が、時代が違うから、実際はそれほどでないだろう)。とおりすがりの最小時間で買いたい人などは、地下街メインストリートの「トキワ園」へ、それ以外は「ジュンク堂」へ、という棲み分けになるか。それにしても、今回は近すぎる。

もうひとつ付け加えると、地元の人は栄について、栄交差点の西(地下街の西)、すなわち丸栄の向こうに明治屋と丸善がある、というイメージが強くあると思う。

現在の「丸善名古屋本店」の位置も、このイメージでだいたい正しいが、広小路通に面していないところが、少し異なる。明治屋もなくなったしね(建物のみ現存)。

対して、栄交差点の東(地下街の東)は、中日ビルの存在感が大きい。地下街も、中日ビルへの通り道、というイメージが強い。そこに(名古屋の人には馴染みが薄いから)新鮮なイメージでジュンク堂が開店すれば、人々のイメージマップを上書きする可能性がある。

万が一のことだが、中日ビルの建て替えに動きがあるかもしれない。工事となれば、中日ビルへの通り道というイメージは薄くなるだろう。

思いつくまま書いてみたが、単に「丸善名古屋栄店の移転」の方が、コストが少ないからベターなはずだ。店内の張り紙(ウェブサイトの案内と同じ)に、「閉店」の文字がないことから、オトナの事情らしき様子をうかがい知ることができると思うけれど、いかが。あるいは雑誌の「廃刊」を「休刊」と告知するようなものかしらん。いずれにせよ、なじみのある「丸善名古屋栄店」という名前が消えるとすれば、残念ですねぇ。

(2016.1.4に推敲)

【追記】図書新聞 3237号(2016年1月9日)の記事に「丸善ジュンク堂書店は1、2月に、ジュンク堂書店を名古屋と東京・立川に出店する。」「名古屋栄店は1月22日に、中区新栄町の明治安田生命名古屋ビル地下1~2階に開店予定。売り場面積は610坪。」とある。

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